記事のリスト 最終更新日 2025年9月8日

認知症について

認知症とは

認知症とは、何らかの疾患によって今までできたことができなくなり、日常生活や社会生活に支障をきたすようになった状態をさします。
主な症状として、
●記憶障害:少し前のことが思い出せない、覚えていたことを忘れる
●見当識障害:時間や日付の感覚がわからなくない、どこにいるのかわからなくなる
●実行機能障害:計画を立てることが難しくなる、家電やATMなどが使えなくなる
●理解力/判断力の低下:考えるスピードが遅くなる、普段と違うことがあると混乱する
が認められるようになります。

認知症の原因となる疾患

認知症の原因としては以下のものがあげられます。

●アルツハイマー病(1番多く、約半数)
●血管性認知症(2番目に多い)
●レビー小体型認知症(3番目に多い)
●前頭側頭型認知症
●正常圧水頭症
●混合性認知症
●そのほかの神経変性疾患(進行性核上性麻痺など)による認知症
●代謝性疾患に関する認知症
●硬膜下血腫

これら以外にも、認知症の原因となる疾患は非常に多く存在し、100種類近いのではないかと思われます。

認知症の主な症状(中核症状)

認知症の主な症状(中核症状)には、以下のものがあります。

●記憶障害
●見当識障害
●実行機能障害
●理解力/判断力の低下

記憶障害とは、少し前のことが思い出せない、覚えていたことを忘れる、といった症状です。アルツハイマー病の初期から認められます。
見当識障害とは、時間や日付の感覚がわからなくない、どこにいるのかわからなくなる、といった症状です。
アルツハイマー病では、発症早期から日付がわかりにくくなるといった症状が認められます。
実行機能障害とは、計画を立てることが難しくなる、家電やATMなどが使えなくなる、といった症状です。
理解力/判断力の低下とは、普段と違うことがあると混乱する、複雑なことが処理できなくなるといった症状です。

認知症の周辺症状・BPSD

中核症状以外にも、周辺症状といわれる問題のある行動が認められることがあります。
これをBPSDといい、生活能力の低下や介護負担の増大につながります。
BPSDには以下のようなものがあります。

●易怒性・暴言・暴力
●うつ・食欲や意欲の減退
●被害妄想・物とられ妄想・嫉妬妄想など
●徘徊
●介護拒否
●不安・興奮
●幻覚
●常同行動(同じことを繰り返す)・性的異常行動 

これらの症状は、病期そのものによるものもあれば、環境や投薬によっておこるものなどがあります。

BPSDの対処法

PSDに対処するにあたり、以下の点に気を付ける必要があります。

  • 体調不良がないか(痛み・便秘・頻尿など)
  • 不適切な薬が使われていないか(副作用で混乱することあり)
  • 不適切な環境ではないか(室温や明るさ、一人で過ごすなど)
  • 不適切なケアが行われていないか

また、これらに加え、

  • 介護サービスの見直し
  • 薬による治療

が必要となることがあります。

薬による治療について、統合失調症やうつ病、てんかんなどに用いられる薬を転用することが多いのが現状ですが、アルツハイマー病における興奮などについては、2024年にブレクスピプラゾールが適応を取得しています。当院においては、ブレクスピプラゾールを含め、極力少ない量でこれらの薬を投与しています。

薬によるBPSD治療について、症状を完全に消すことを目標とせず、介護において許容できる程度までの改善を目指すのが良いと考えられます。その理由として、症状を完全に消すこと自体が難しいこと、また、そこを目指すと高容量の薬が必要となり、副作用の懸念が高まることがあげられます。

アルツハイマー病の薬物療法

2007年に初めてのアルツハイマー病治療薬であるドネペジル(アリセプト)が発売されました。その後、同系統の薬であるガランタミン(レミニール)やリバスチグミン(リバスタッチ・イクセロン)が発売されました。これらはいずれもコリンエステラーゼ阻害剤というタイプのもので、脳内のコリンを増量させることによって認知機能の維持を行うといったものです。投与した印象として、ぼーっとしているのを改善させる傾向があります。

また、その間にメマンチン(メマリー)が発売されました。これはNMDA受容体拮抗薬というタイプのもので、前述のコリンエステラーゼ阻害剤と併用することが可能です。こちらを投与した印象として、元気すぎるのが落ち着くといった傾向があります。

2023年に抗アミロイド抗体薬であるレカネマブ(レケンビ)が、翌2024年にはドナネマブ(ケサンラ)が発売されました。これらは抗アミロイドβ抗体薬というもので、アルツハイマー病の原因物質の一つであるアミロイドβに結合し、脳内から排除するという作用があり、今までの薬よりも、より病気の本質に迫ったものであるといえます。

しかし、いずれの薬もアルツハイマー病を改善させる効果はなく進行抑制のためのものとなります。

以下、執筆予定

コリンエステラーゼ阻害剤

NMDA受容体拮抗薬

抗アミロイドβ抗体

高齢者の薬について

副作用が出やすい傾向

一般的に、投与された薬は腎臓から排泄されるか肝臓で代謝され、体外に排出されていきます。

高齢者において、腎・肝ともに機能の低下を来しているため、通常の量を投与しても実質的に過量投与となる危険性があります。

また、特定の薬が効きにくい または 効きやすい といったこともあり、個別に投与量の調節を行う必要があります。

さらに、複数の疾患に対して数多くの薬が投与されていることが多いため、各々の相互作用や重複する副作用にも注意を払う必要があります。

こういった点から、通常の成人と比べ、高齢者への投薬は慎重さが必要となります。

通常、錠剤は1錠単位で処方するのですが、それでは効き過ぎてしまうことがあるため、0.5錠や0.25錠で処方することも少なくありません。こういった場合は、薬局に依頼し錠剤を割ってもらう必要があります。一手間かかりますが、こういった治療が必要なのが高齢者なのです。

以下、随時執筆予定。

生活習慣病

生活習慣病とは

生活習慣病とは、食習慣・運動習慣・休養・喫煙・飲酒など生活習慣が、発症や進行にかかわる疾患群を指します。

具体的には、癌・循環器疾患(心臓や血管の疾患)・糖尿病・慢性閉塞性肺疾患(COPD)などがあげられますが、これらは、喫煙・高血圧・脂質異常症(コレステロール)・糖尿病・過度の飲酒などによって惹き起こされます。

なぜ、生活習慣病を管理しないといけないのか?

生活習慣病は、初期には自覚症状に乏しく、患者さん本人はとくに困ることがないのですが、そのままにしておくと、癌・心筋梗塞・脳梗塞・腎不全などを惹き起こす危険性が高くなります。

これらの疾患は、直接生命に大きな影響を与えるか、そうでなくても生活の質を大幅に下げる可能性があります。

癌や心筋梗塞は言うまでもなく、脳梗塞で麻痺などの後遺症が残ったり、腎不全で人工透析が必要となる事態を避けるために、これらをしっかり管理していく必要があります。

生活習慣病をどのように管理していくのか

規則正しい生活・禁煙・適切な食事・運動習慣・飲酒量の低減・十分な休養といったことは大切です。これらを抜きに、生活習慣病の真の改善は得られません。

しかし、これらを実践し、生活習慣病を完全に克服することは非常に難しいのが現実です。

当院では、生活習慣の改善を行う事を前提としながら、投薬治療によって必要な治療を初期から行います。その後、生活習慣の改善が得られば、薬の減量ないし中止を行っていきます。

よく、高血圧・コレステロール・糖尿病などの薬は「一回飲み出したら一生飲まなければならない」と考える方がいますが、生活習慣が改善できればこれらを中止することは可能です。

生活習慣を変えられないまま、薬による治療も行われず、悪い状態が継続してしまうことは、最も避けたい事態です。

以下、執筆予定

高血圧

2型糖尿病

脂質異常症(コレステロール異常)

生活習慣病と認知症

生活習慣病は認知症の発症リスクとなる

脂質異常症(コレステロール)・高血圧・糖尿病などの生活習慣病は認知症の発症リスクとなることは以前から指摘されてきました。

これらの生活習慣病は動脈硬化を引き起こし、脳梗塞を発症させますが、これによって認知機能が低下することは、想像しやすいことです。

しかし、脳梗塞を原因とする血管性認知症だけでなく、アルツハイマー病の発生にも関係していることが明らかになっています。そのメカニズムについて、仮説があるのですが、それは別の機会にご説明しようと思います。

認知症の発症リスクを下げるためには、中年期からの生活習慣病の管理が必要といわれています。

ある研究では、中年期からLDLコレステロールが高いと、認知症が7%発症しやすくなると考えられています。同様に、高血圧や糖尿病も2%ずつ発症しやすくなると考えられています。そのほかにも、本人の心がけで取り除ける発症リスクはたくさんあり、これらをすべて行えば、最大で45%も発症リスクが下げられる可能性があると言われています(出典:The Lancet CommissionsVolume 404, Issue 10452p572-628August 10, 2024)。

認知症のリスクのうち修正(対応・治療)が可能なもの

生活習慣病を含め、修正可能なものについては以下のものがあげられます。

実際には改善が困難なものも含まれていますが、これらを合計すると、最大で45%も発症リスクが下げられることとなります。

青は若年時からの修正が、紫は晩年になってから修正が、赤は中年期からの修正が必要なものです。

認知症を予防するためには中年期からの対策が必須であることが分かります。

なお、先進国において認知症の発症リスクは低下傾向にあります。その要因として、教育の向上や生活習慣病に対する治療があげられます。

しかし、日本においては高齢者の増加が顕著なため、発症リスクはさがりますが当面の間、認知症患者の総数は増えることが予測されます。