- 高血圧治療ガイドライン
- 高血圧治療で重要なポイント
- 血圧を下げることによる効果
- 治療の早期開始
- 家庭血圧の測定が大切
- 運動
- カリウム摂取と代替塩の利用
- 節酒・禁煙
- 高血圧の症状
- 高血圧の検査
- 降圧薬の種類
- 高血圧の受診タイミング
- 緊急受診が必要な症状
- 睡眠時無呼吸症候群との関連
- 二次性高血圧について
高血圧について
高血圧は、日本では約3人に1人が該当するといわれる非常に頻度の高い疾患です。
自覚症状がほとんどないまま進行することが多いですが、放置すると脳卒中や心筋梗塞などの重大な病気の原因となります。
そのため、早期に血圧を管理することが重要です。
高血圧治療ガイドライン(2025年改訂)
2025年に高血圧治療ガイドラインが改訂されました。
以前は年齢ごとに目標血圧が設定されていましたが、現在は全年代で共通の目標血圧が示されています。
家庭血圧:125/75 mmHg 未満
診察室血圧:130/80 mmHg 未満
家庭血圧は日常生活の中で測定されるため、より実際の血圧状態を反映するとされています。
高血圧治療で重要なポイント
ガイドラインでは、以下の生活習慣の改善が重要であるとされています。
食塩摂取量の制限
1日6g未満が推奨されています。
しかし、日本人の平均食塩摂取量は約10g/日とされており、減塩の達成は簡単ではありません。
日頃から意識的に塩分を控えることが大切です。
体重管理
目標はBMI 25未満です。
BMIは次の計算式で求められます。
BMI = 体重(kg) ÷ 身長(m) ÷ 身長(m)
肥満は高血圧の大きな要因となるため、適正体重の維持が重要です。
身長/上限体重 は以下の通りです。
150cm/56kg
155cm/60kg
160cm/64kg
165cm/68kg
170cm/72kg
血圧を下げることによる効果
収縮期血圧(上の血圧)を10mmHg下げることで、脳卒中や心疾患のリスクが約20%低下することが知られています。
血圧を適切に管理することは、将来の重大な病気の予防につながります。
治療の早期開始
血圧が高い状態を長期間放置すると、血管へのダメージが蓄積します。
そのため、ガイドラインでは治療を先送りせず、早い段階から血圧をコントロールすることの重要性が強調されています。
薬による治療を開始し、生活習慣や体重減少による血圧降下が認められれば、減薬ないし中止を行っていきます。
家庭血圧の測定が大切
家庭での血圧測定は、日常の血圧状態を把握するうえで非常に重要です。
診察室で高くなる白衣高血圧は有名ですが、診察室では正常でも家庭では高血圧となる仮面高血圧が存在するため、家庭血圧の確認が推奨されています。
血圧手帳をお渡ししておりますので、記入して受診時にお持ちください。
運動
適度な運動は血圧の改善に有効です。
- ウォーキング
- 軽度の筋力トレーニング
などを継続的に行うことが推奨されています。
ただし、心機能が低下している場合や、運動時に胸痛が出る場合は、医師にご相談ください。
カリウム摂取と代替塩の利用
カリウムは体内のナトリウム排泄を促し、血圧を下げる作用があります。
ただし、腎機能障害がある場合はカリウム制限が必要となることがあります。
代替塩の利用も血圧を下げる効果が認められています。
代替塩とは、塩(塩化ナトリウム)の一部を塩化カリウムに置き換えた物で、WHOも利用を推奨しています。スーパーなどで、簡単に手に入ります。
ただし、カリウムが多く含まれるため、重度の腎機能障害がある場合は摂取にご注意ください。
節酒・禁煙
過度な飲酒や喫煙は血圧上昇や動脈硬化の原因となります。
節酒と禁煙は、高血圧管理において重要な生活習慣改善です。
高血圧の症状
高血圧は自覚症状がほとんどないことが多い病気です。
そのため「サイレントキラー(沈黙の病気)」とも呼ばれています。
多くの場合、健康診断や家庭血圧測定で初めて指摘されます。
しかし血圧がかなり高くなると、次のような症状が現れることがあります。
- 頭痛
- めまい
- 動悸
- 息切れ
- 首や肩のこり
- 朝起きたときの頭重感
ただし、これらの症状がない場合でも血圧が高いことは珍しくありません。
そのため、定期的な血圧測定が重要です。
高血圧を放置すると、
- 脳卒中
- 心筋梗塞
- 心不全
- 腎不全
などの重大な病気につながる可能性があります。
高血圧の検査
高血圧の診断や原因の評価のため、以下の検査を行います。
血圧測定
診察室での血圧測定だけでなく、家庭血圧の測定が重要です。
家庭血圧では125/75 mmHg未満が目標とされています。
診察室では正常でも家庭で高い場合は仮面高血圧の可能性があります。
血液検査・尿検査
血液検査では、次のような項目を確認します。
- 腎機能(クレアチニンなど)
- 電解質(ナトリウム・カリウム)
- 血糖値
- コレステロール
これにより、動脈硬化のリスクや二次性高血圧の可能性を評価します。
心電図・胸部レントゲン・心臓超音波検査
高血圧が長く続くと、心臓に負担がかかることによって心電図やレントゲンに異常が認められることがあります。
これらの検査での異常や聴診で心雑音が認められた場合は、心臓超音波検査を行います。
降圧薬の種類
生活習慣の改善だけでは血圧が十分に下がらない場合、降圧薬による治療を行います。
現在は複数の種類の降圧薬があり、患者さんの状態に応じて選択されます。
ARB(アンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬)/ACE阻害剤
最もよく使用される降圧薬の一つです。
特徴
- 血管を拡張して血圧を下げる
- 腎臓を保護する作用がある
- 副作用が比較的少ない
糖尿病や腎臓病の患者さんにもよく使用されますが、一時的に腎機能の指標であるクレアチニン値が上昇することがあります。しかし、長期的には腎機能の保護が得られるため、可能な限り投与を継続します。
カリウム上昇の作用があるため、腎機能障害がある場合に注意を要します。
ACE阻害剤には空咳の副作用があるため、一般的にはARBが用いられますが、ACEには誤嚥性肺炎の予防効果が認められています。
ACE阻害剤とARBの併用効果は得られないことがわかっていますので、通常はどちらか一方が処方されます。
カルシウム拮抗薬
血管や心筋の筋肉をゆるめて血圧を下げる薬です。
特徴
- 降圧効果が強い
- 日本で広く使用されている
副作用として
- 足のむくみ
- ほてり感
- 夜間頻尿
- グレープフルーツジュースが飲めない(果肉には問題となる成分はあまり含まれていない/圧搾したときに果皮成分がジュースに含まれる)
などがみられることがあります。
一般的にARBが優先的に投与されることが多い印象ですが、降圧効果が高いため、脳出血の歴がある場合などには優先して投与されます。
利尿薬
ループ・サイアザイド・ ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬などがあります。
余分な塩分や水分を尿として排出し、血圧を下げます。
ループとサイアザイドはカリウムを下げる作用が、ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬はカリウムを上昇させる作用があるため、併用して副作用を打ち消す事もあります。
サイアザイドはARBと併用されることが多く、合剤も発売されています。
副作用として、脱水やナトリウム・カリウムのバランスを崩すといった副作用もあるため、その他の降圧薬よりも血液検査を行う頻度が高くなります。
ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬は他の利用薬と異なり、臓器保護の効果があります。分類としては利尿薬ではありますが、ARBやACE阻害剤に近い薬で、古くはスピロノラクトンが有名ですが、新薬も登場しています(フィネレノン・エサキセレノンなど)。
β遮断薬
交感神経を抑制し心拍数や心収縮力を抑えることで血圧を下げます。
降圧効果はあまり強くありませんが、心臓を保護する効果にすぐれ、慢性心不全や心筋梗塞後には積極的に使用されます。
特に、脂溶性β遮断薬にその効果が高く、ビソプロロール・カルベジロール(αβ遮断薬)が頻用されます。
単純な高血圧の場合に出番は少ないですが、心不全・心筋梗塞・不整脈などを合併した場合には是非投与したい薬です。
SGLT-2阻害剤
もともとは糖尿病の薬でしたが、腎臓や心臓の保護効果があることがわかり、利用されるようにありました。
降圧薬としての効果は限定的ですが、上記の効果が得られるため、これらが合併している場合は積極的に投与されています。
尿糖を腎臓から排出するときに得られる利尿作用によって血圧が下がると考えられています。
α遮断薬
血管を拡張させることで降圧作用を得ます。
起立性低血圧(立ちくらみ)が出やすく転倒リスクとなるため、高齢者には投与しにくい薬です。
通常、他の薬を用いても血圧が下がらない場合に用いられます。
高血圧の受診タイミング
次のような場合には医療機関での評価をおすすめします。
健診で血圧が高いと指摘された場合
健康診断で130/80 mmHg以上を指摘された場合は、一度医療機関での評価が必要です。
家庭血圧が高い場合
家庭血圧で125/75 mmHg以上が続く場合は、高血圧の可能性があります。
特に、朝は血圧が高い傾向がありますので、起きてから活動する前の血圧測定を行ってください。
緊急受診が必要な症状
通常、高血圧は緊急性のない疾患です。たとえば、無症状で血圧だけが160mmHgに上昇しても、通常は何も起こりません。
ただし、高血圧とともに次のような症状がある場合は、すぐに医療機関を受診するか「#7119」に電話をすることをご検討ください。
- 突然の激しい頭痛
- 胸の強い痛みと左肩や歯への痛みの広がり
- 目の見えにくさ
- 嘔気・嘔吐
睡眠時無呼吸症候群との関連
睡眠時無呼吸症候群は高血圧症のリスクとなります。
- 日中の眠気
- 不眠(熟眠感のなさ)
- 夜間頻尿
- 集中力のなさ
- 朝の頭痛
- いびきや呼吸停止の指摘
これらがある場合は、睡眠時無呼吸症候群の検査をおすすめします。
当院では、ご自宅で簡単に実施可能な検査を行っております。
二次性高血圧について
高血圧の多くは生活習慣と関連する「本態性高血圧」ですが、
中には特定の病気が原因となって血圧が上昇する「二次性高血圧」も存在します。
代表的なものとして以下が挙げられます。
- 原発性アルドステロン症
- 腎血管性高血圧症
- 薬剤性高血圧(偽性アルドステロン症など)
- クッシング症候群 など
原発性アルドステロン症
原発性アルドステロン症は、高血圧患者の約5〜10%を占めるとされており、決して稀な疾患ではありません。
この疾患では、
- 一般的な降圧薬が効きにくい
- 特にACE阻害薬やARBが十分な効果を示さない
ことがあります。また、
- 下肢のむくみ
- 低カリウム血症
などがみられる場合もあり、見逃さないことが重要です。
二次性高血圧の治療
これらの二次性高血圧は生活習慣病とは異なり、
原因となる疾患に対する専門的な治療が必要となります。
そのため、血圧が高い場合には原因を適切に評価することが重要です。
